今回は飲料水について取り上げます。
中国でミネラルウォーターを買うとしたらどれを選ぶべきかを2回に分けてみます。
日本では水道、またメーカーへの信頼感もあって生活の中ではあまり気にせず利用していることもありますので中国での水・ミネラルウォーターの選び方の前に、日本での基本的なところ次に中国の現状を確認し、第2回で旅行者が店頭で選ぶべき水についてふれてみます。
日本の水・ミネラルウォーター現状
売れ筋をいくつかピックアップし硬度や原材料名をまとめてみました。
なおコカコーラ「い・ろ・は・す 天然水」は採水地が複数ありますが、製品名は1つのため範囲で記しています。
水の硬度
海外旅行先の水の硬度はよく話題となります。水に含まれるCa(カルシウム)イオン,Mg(塩)イオンの質量濃度を指しますが、WHO の Guidelines for Drinking-water Quality、Hardness in Drinking-water によれば以下のように分類されています。数値は水1リットルにCa,Mgが何ミリグラム含まれているかを示しています。
軟水(soft) | 60未満 |
中硬水(moderately hard) | 60~120 |
硬水(hard) | 120~180 |
超硬水(very hard) | 181以上 |
日本の各地域の硬度は栗田工業のグループ会社であるクリタック株式会社が現地水道水から採取し分析した全国水質マップを見るとビジュアルに確認できます。関東、沖縄を除き全域で軟水であることがわかります。なお文部科学省の2015年資料で全国5,000超施設の水道事業体の水質測定データによると硬度は中央値44,最大値294となっています。
原材料名(原水の種類)
ピックアップした製品の原材料に出てくる水も原水の種類が記されています。鉱水、鉱泉水の違いですが農林水産省「ミネラルウォーター類(容器入り飲用水)の品質表示ガイドライン」の”原水の種類”では以下のように定義されています。
- 鉱泉水:自噴する地下水のうち水温が25℃未満の地下水であり、かつ、溶存鉱物質等によ り特徴付けられる地下水
- 鉱水:ポンプ等により取水した地下水のうち溶存鉱物質等により特徴付けられる地下水
また”原水の種類”と採水、処理方法などによりミネラルウォーターには様々な品名があります。端的に書くと特定地域の地下の湧き水「鉱泉水」か地下のたまり水「鉱水」を使った商品がナチュラルミネラルウォーターを名乗ることができるということになります。
ちなみに(ざっくり書くと)「鉱泉水」の温度が高いものが「(飲める)温泉水」、特定地域じゃ無ければ「(飲める)湧水」となります。
なお、2012年の清涼飲料水の規格基準改正によりこれらのミネラルウォーター類は殺菌・除菌有と無で分かれています。日本のメーカーのものは、それまでの製法もあり「ミネラルウォーター類(殺菌・除菌有)」で、泉源のそのままの水が重要なポイントとなるヨーロッパ系のエビアンなどは「ミネラルウォーター類(殺菌・除菌無)」のカテゴリーとなります。
参考 サントリー 『サントリー天然水』は加熱殺菌をしていますか?
参考 エビアン “ナチュラル” ミネラルウォーターの秘密とは
基準改正前は殺菌・除菌が必須でしたが、改正以降は各メーカーが明らかにしないとどちらに属するかはわかりません。
中国大連の水道水
大連の水道水は北部にある庄河の英那河ダムを水源地としている地表水ですがミネラルが溶け込んでおり市の北と南で地域差もありますが硬度は約250~350mg/Lと「超硬水」です。
中国の水道水事情
水道水をそのまま飲む中国人はほぼいません。安全性に対する疑問があり沸かして飲むのが一般的です。他にはウォーターサーバー(饮水机[飲水机])、浄水器(净水机)も利用されています。
そもそも冷たい飲み物を飲んで体を冷やす習慣は体に良くないとして中国の人にはありませんので、暖かい飲み物を飲むのが普通の生活スタイルでもあります。なおビールも常温です。冷たいビールが出てくるお店は日本人出向者が常連客にいるためと言われています。特にメーカー系日系企業の多い地域はそういう風土が醸成されているように思います。
ウォーターサーバーは日本で見かけるウォーターサーバーと同じ形とは別に家庭用は雑菌発生の問題、水ボトル交換の手間、繰り返し加熱される水は良くないという認識があり様々な商品展開があります。なおホテル、サービスアパートメントなどに設置されているウォーターサーバーも基本的にはお湯の蛇口を使わず水の方から沸かして飲む方が良いとされています。
左の方は家具調、右の方はボトルが下部にあります。ここまでなら日本にもありますが、さらには上部に水栓、IHコンロまで付いています。さらに下部に浄水器機能内蔵している浄水器内蔵ウォーターサーバー(净饮机)もあります。
浄水器は日本のコンパクトさを求める趣向とは違い、性能アピールのしやすさからか内蔵する浄水カートリッジの数や大きさが目立つようになっています。性能の良さをうたうメーカーのホームページのテスト結果写真は性能の高さよりも元々の飲料水の汚さに目がいってしまいます。
日本人としてはカートリッジの数の意味が気になるところですが水の汚れ、水源の汚染、水道管の老朽化、重金属の基準値超えに対しフィルターごとに不純物除去の役割が異なります。プリンターのトナーカートリッジの色のようにラベリングされています。もちろん日本と同じく浄水フィルターはお高めです。かつては浄水器専業メーカーが多くありましたが、昨今はかなり淘汰され総合家電メーカーの商品が人気です。日本のメーカーは三菱ケミカルクリンスイの一社が見受けられる程度です。
後編へ続きます。